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医学部に強い中高

2025.06.16

【広尾学園中学校・高等学校】
学術の本質をとらえた研究活動と
医療の本物に触れる体験で
医師・研究者に必要なマインドを育てる

「本科」「インターナショナル」「医進・サイエンス」の3コース制を導入し、生徒一人ひとりの可能性を最大限まで引き出す教育を実践している広尾学園中学校・高等学校。そのユニークな教育方針と進学実績で近年人気を高めている中高一貫の共学校だ。2025年度大学入試では、医学部医学科に96名(うち現役生70名)という合格実績を記録した。医進・サイエンスコース(以下、医サイ)のカリキュラムの特色について、同コース統括長の石田敦先生にお話を伺った。

All English実験講座では、医サイ高校生が中学生参加者を指導する

大学・大学院レベルの 「研究活動」に必修で取り組む

――医サイのカリキュラムの特色について教えてください。

 

石田 カリキュラムの最大の特徴は、中高を通じて「研究活動」を必修化していることでしょう。中学では「理数研究」、高校では「学術研究」と授業名は異なるため、学内では「研究活動」と総称しています。身の回りの自然現象に対する自由研究のようなものよりも、学問的に深く高いレベルのものを目指しています。合言葉は「世界のまだ誰も答えを知らないことにチャレンジしよう」。いわば科学の最前線に挑戦するわけですから、大学や大学院の研究室で行うゼミをイメージしてもらうとわかりやすいかもしれません。

 

――「研究活動」は具体的にどのように行われるのでしょうか。

 

石田 まず、分野ごとにチームを分けます。中学で扱うのは「医療」「分子生物」「環境科学」「現象数理」「数論」の5分野。高校ではさらに「植物」「理論物理」「情報・メディア」の3分野が加わって8分野になります。2〜3人で一つのテーマに取り組む例が多いですが、意欲的な生徒は個人で行う場合もあります。


   各分野の中での研究テーマは自分たちで設定しますが、これが非常に重要かつ難しいところです。まずは興味があるテーマに関係する英語の原著論文を読むところからスタートします。世界のまだ誰も答えを知らない問題にアプローチするのですから、現時点で研究がどこまで進んでいるのか、その最前線を見極める必要があるからです。そのうえで、何を明らかにしたいかを考え、グループメンバーや担当教員と話し合いながら研究を進めていきます。「世界のまだ誰も知らないこと」ですから、教員も当然知りません。「一緒に学ぶ」という姿勢で伴走します。理科室には、細胞をスライスするクリオスタット、培養細胞を見るための蛍光倒立顕微鏡、金属表面に薄膜を形成するための真空蒸着装置など、大学レベルの本格的な研究設備が整ってます。
 

医進・サイエンスコース
統括部長 石田 敦 先生

学術の本質をとらえ 学び方と学ぶ面白さを知る

――テーマを見ると、確かに大学・大学院研究室レベルの研究ですね。中高生がここまで高度な研究に取り組めるのはなぜでしょうか。

 

石田 生徒たちの研究活動をサポートするために、学校側で可能な限りの環境を整えているからです。医サイ専属の教職員22名に加えて非常勤講師15名が研究活動の指導と支援に当たっています。非常勤講師の顔ぶれには、現役の研究者や、退官・退職した大学教授や企業の研究職の方たちがおり、皆さん、「後進の若い人たちを育成したい」「研究のおもしろさを知って欲しい」という純粋な気持ちで労を惜しまず指導にあたって下さっています。また、本学を卒業した医学部生や理工系の修士・博士、そして医師になったOBやOGたちも、様々な場面で中高生の研究をサポートする体制があります。そういった人たちの協力を得られやすいよう、中学の「理数研究」、高校の「学術研究」の授業は、すべて土曜日に集約しています。生徒たちにとっては、研究の最前線を知る人たちから直接指導を受けられるため、それだけ研究へのモチベーションが高まり、それが研究成果にもつながっています。

 

――学校として、そこまで「研究活動」に力を入れるのはなぜでしょうか。

 

石田 生徒たち一人ひとりに、みずから学ぶこと・研究することのおもしろさを心から実感してもらうためです。本校の研究活動は、中高生にとっては確かに高いハードルかもしれませんが、メンターから直接指導されることで、学問の「学び方」やおもしろさを知ることができ、研究の成果が得られればさらに達成感を味わいます。こうした体験こそが、将来医師や研究者になったときの心のよりどころになるはずです。

 

――それぞれの研究成果はどのように発表されるのでしょうか。

 

石田 研究の成果は、本校の文化祭である「けやき祭」や、年度末にコースで実施する「成果報告会」、そして大学等が主催するコンテスト等で発表されます。そして、学会において高校生部門ではなく一般の部で研究者と同じ土俵で発表することを目標としており、実際に生徒たちはそのレベルの研究を進めています。

各大学の医学部との連携で 医療の「本物に触れる」

――医学部受験についてはどのような取り組みをされていますか。

 

石田 医サイ生のおよそ3割~4割程度が医学部志望ですが、「彼らにとってのゴールは医学部進学ではない」とわたしたちは考えています。医学部進学は医師という職業を選択することとほぼ同義ですから、彼らが目指すべきは「医師になること」であり、「医学・医療を通して患者や社会に貢献すること」です。そのためには中高生の段階から医師という職業や現代の医療についての理解を深め、必要な資質・能力を知り、自分が向いているかどうかを自問自答し、将来どんな医師になりたいのか、自分のキャリア観をある程度固めておかなければなりません。いわゆる“医学部受験のミスマッチ”を事前に防ぐためにも、生徒たちには医師として働くことの意義や難しさ、やりがいなどを自分事としてしっかりとらえておいてほしいのです。


   そのために医サイが掲げているもう一つのキーワードが「本物に触れる」です。中高生の時点で、医療の最前線で活躍する医師や実際の医療現場に触れられるよう医師や大学の医学部との連携・提携があります。

病理診断講座での手術室の立ち会いも、「医進・サイエンスコース」から生まれた

――どのような連携なのでしょうか。

 

石田 たとえば、大阪医科薬科大学の総合診療医の先生には毎年講演をお願いしているだけでなく、夏休みに大学と連携した地域医療実習を行っています。これは、本校生徒の有志数名が大阪医科薬科大学の医学生と泊まりがけで兵庫県の町や村を回り、医療資源に乏しい地域医療の実情を肌で体験するというものです。本校の生徒の多くは都会育ちですから、過疎と高齢化が進む地域の現状に大きな驚きを受けるようです。過去にはこれに参加したことで総合診療医を志したという生徒もいました。


   また、順天堂大学との連携では、病理診断体験セミナーを毎年実施しています。病理医についての理解を深めることができ、また症例カンファレンスで優秀な成績を収めたチームの生徒たちは、大学附属病院での手術に立ち会い実際の病理診断を体験する機会もあります。


   実際の医療現場は必ずしも楽しいことばかりではありませんが、そうした実情を知ったうえでもなお医師をめざそうというのであれば、その志望動機は本物であり、勉学に対するモチベーションもおのずと高まるでしょう。

 

大学との新プログラムが始動 大学医学部がますます身近に

――順天堂大学とは昨年、高大連携協定を結ばれましたね。

 

石田 はい。順天堂大学医学部とはこれまで10年以上連携して活動を展開してきたので、その実績を踏まえ、昨年正式に連携協定を結びました。そして新たな連携の試みとして今年度からスタートするのが「JU-STARプログラム」です。「JU」は順天堂、「STAR」 はScientific Training in Advanced Researchの略です。これは本校の高校生を順天堂大学医学部が「研究者」として迎え入れ、大学教員による個別指導を行いながら、医学生に交じって医学研究を実施するというもの。現時点では、解剖学・生体構造化学と生化学の研究室が受け入れの候補に挙がっています。2か月の試験期間を経て、教員と生徒双方の合意が得られれば、研究は年度末まで継続します。高校生でありながら大学医学部で本格的な研究ができるという高度なプログラムになっています。

 

――最後に、医学部受験の対策について教えてください。

 

石田 医サイの教員たちはこれまで多くの医学部志望生徒を指導し、合格に導いてきました。筆記試験の対策はもちろん、入試直前に行われる模擬面接もかなり実践的で、合格した生徒からは「面接の練習が役に立ちました」とよく言われます。また、近年は推薦や総合型選抜を行う医学部が増えましたが、本校の「研究活動」は高校での活動実績として高く評価されることが多く、最難関といわれる東京科学大(旧東京医科歯科大)医学部医学科の推薦入試では、毎年全国で5名しかいない枠に対して過去5年で4名の合格者を出しています。また本校では、研究活動等を通して上級生と下級生の縦の関係が密であり、自身の志望する大学の医学部に合格した先輩から貴重なアドバイスを受ける機会も多く、それが本校の合格実績にもつながっているようです。


   医学部進学には高い学力だけでなく、医学・医療に関する知識・理解、そして医師になるというビジョンと覚悟が必要です。将来医師をめざしている皆さんは、本校で志の高い仲間とともに一緒に学びませんか。

※本記事は『日経ビジネス 特別版 SUMMER.2025〈メディカルストーリー 教育特集号〉(日経BP社)』に掲載されたものです。

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