医学部に強い中高
2025.06.16
【川崎医科大学附属高等学校】
9年一貫教育で良医を育成
総合判定型入試も新設
川崎医科大学附属高等学校は、全国で唯一の医科大学の附属高校。高大接続による9年一貫教育を実施しており、川崎医科大学医学部医学科への進学率は9割を超える。その教育の特色と、2026年度入試から新たに加わる入試区分について竹田義宣校長に伺った。
25年度は受験者全員が 川崎医科大学に合格
川崎医科大学附属高等学校の最大の魅力は、医学部医学科への進学実績だ。開校以来、卒業生の川崎医科大学への進学率は90・3%、他大学も含めれば94・3%が医学部進学を果たしている。直近の2025年度入試においては、川崎医科大学を27名が受験して全員が合格している。
「その背景にあるのが、川﨑祐宣初代理事長から受け継がれてきた本校の教育姿勢です。1970年に医科大学開学と同時に開校した本校は、9年一貫教育による良医育成の出発点として、医師に求められる資質の涵養に努めています」と竹田義宣校長は語る。
実際、医科大学からは附属高校出身の学生に対して「若くてエネルギーがある」「挨拶がよくできて優しく、患者さんからの評判がいい」「テーマ学習に積極的に取り組んでいる」「医師に対する意識が高い」といった肯定的な評価が寄せられている。
また、同校生徒に実施したアンケートを学年別に比較したところ、高校生活を重ねるほど相手への優しさや思いやり、自己肯定感などが上昇する、という結果が数値としても明確にでており、良医に欠かせない資質が着実に育っていることがわかる。
「ドクターロード」に加え 全寮制による人間教育も
このような人間力と進学実績を生み出す同校の教育活動には、3つの大きな特色がある。
第1は、高大接続による早期医学専門教育の第1段階ともいうべきプログラム「ドクターロード」だ。高校段階で医学や医療に関する様々な体験型授業を行うことで、生徒一人ひとりの内面を磨き、良医になるための自覚を育んでいる。
「ドクターロード」は、医学の歩みを実感する「現代医学教育博物館研修」や、医科大学などの医師に1対1で向き合う「医師へのインタビュー」、医科大学の医師による高校生向けの授業「メディカルスクール・アワー」、課題発見から調査・実験・観察をチームで実施する「テーマスタディ」、大学の実験室を体験する「医科大学体験実習」など8つのプログラムからなる。
「第2は、全寮制による人間教育です。協調性やコミュニケーション能力、自立心、健康な体づくりといったことをめざしています。同時に居室とは別に学習室を完備し、夜間一斉学習を行うなど、規則正しい生活習慣と学習習慣の確立にも大きく寄与しています」(竹田校長)
第3は、理科3科目を全員が入試レベルまで学ぶことだ。医学部で学ぶ力の基礎を鍛えるため、物理、化学、生物の各科目を3年間で大学入試レベルの学力まで引き上げている。
医科大学体験実習では,医科大学の研究活動の一端に触れることにより,-基礎・応用医学の研究の重要さ,奥深さを感じることができる。
大学入学前の研修を通じて 大学とのシラバス連携も
川崎医科大学への入学が決まった生徒に対して行う「川崎医科大学入学前研修」も、良医育成に大きな役割を果たしている。
「これは連携教育というより、むしろ接続教育とも呼ぶべきもので、午前中は高校で各教科とも大学での学びに対する準備教育的な授業を行い、午後は医科大学で医学部生が学ぶ内容を先取りして学びます。24年度は21日間、124時間のプログラムとして実施しました」(竹田校長)
高校では、たとえば数学では医用統計学やデータ分析など、英語ではメディカルイングリッシュ、生物ではDNAの抽出実験やカエルの解剖などを扱う。また、物理や化学で大学での学びに支障が出ないように苦手分野を手当するほか、国語と公民との教科横断型授業により、文献を読んで問題を提起し、根拠を踏まえて意見を述べる学習活動なども行っている。
一方、大学では、実際のご遺体の骨を使って、すべての骨の名前を日本語と英語とラテン語で覚え、スケッチしたり組み立てたりする「骨学実習」などを行っている。
「献体されたご家族への感謝も含め、張り詰めた空気のなかで行いますから、通常の高校生では絶対に経験できない貴重な体験です」(竹田校長)
「ドクターロード」から「入学前研修」へと続く、早期医学専門教育の実効性を高めるため、今年度から制度的な改革も進めている。たとえば「ドクターロード」は、それぞれ独立していた各プログラムを体系化。ドクターロードⅠ、Ⅱと順序をつけ、「テーマスタディ」をドクターロードⅢとして総まとめにするといった具合に教育課程を整備した。
「また、今年度の入学生からは『入学前研修』の授業も学校設定教科・科目として単位化し、川崎医科大学に合格した生徒の選択履修という形を取ることにしました」(竹田校長)
附属病院見学では,最先端の医療環境を知ることで,医師になるうえで何を学んでおく必要があるかを感じ,学習意欲を高めることができる。
「総合判定型入試」を新設
26年度入試からは、新しい入試区分が加わる。これまで同校への入学手段は、いずれも学科試験を経た上での「専願入試」と「一般入試」の2種類だけだったが、26年度入試からは、医師を目指す志を持ち、より強くアドミッションポリシーに合致しているかどうかを重視して判定する「総合判定型入試」(専願)が導入されることになっている。
「従来の入試でも、4教科の試験成績だけでなく、面接なども踏まえた総合的な合否判定を行ってきました。しかし、学力の定義は多様ですから、中学3年間の成績や課外活動の実績なども含め、さらに多面的・総合的な評価を行う試験により、多様性の幅を広げたわけです」(竹田校長)
なお、「総合判定型入試」は、10月の「入試対策[実践編](英語・数学)」に参加し、11月に実施される「進学相談会」へ参加した上で出願することになっている。学科試験がない分、勉学への意欲も含め、より幅広い観点から評価されるのは当然だろう。良医へとつながる道が、もう1本追加されるという意味で、歓迎すべき入試改革といえよう。
卒業生からのメッセージ
目標とやる気があれば夢を実現できる高校 医師に必要な資質を鍛えてもらえた
川崎医科大学 医学部医学科 3年
久高 唯莉さん
私は小学生のころから「将来は医師になりたい」と思っていました。中学まではインターナショナルスクールに通っていましたが、高校受験にあたって、医学部に進学できる可能性が高い高校を探して悩んでいた時に、インターネットでこの学校をみつけました。卒業生の90%以上が医学部に進学しているという実績や、高校生のうちから本物の医師に触れる機会が多いことに惹かれ、受験を決意しました。
「ドクターロード」で、高校OBも含めて何人もの医師から貴重な実体験を聞けたことは強く印象に残っています。とくに整形外科の女性医師からは詳しい手術の様子を紹介いただいた後、「あと数十分で手術だから」と足早に去っていく姿に、こんな医師になりたいと思ったことを覚えています。
また、自分でテーマを決めて、調査や実験をしてプレゼンをするといった学び方を高校時代のテーマスタディの授業で経験できたことも、医学部進学後の大きなアドバンテージになりました。川崎医科大学では2年次に「医学研究への扉」という研究に触れる授業があり、私はオックスフォード大学の基礎医学研究室に配属される2人のうちの1人に選ばれ、1か月間留学して研究を行い、発表をしました。
現在では治療法が確立し、進行した状態を観察できない疾病について、それを昔の標本で確認できたことや、オックスフォードの医学生と触れ合えたことは大きな収穫になりました。積極的に質問したり、意見を述べたり、自ら進んで調べに行く姿を目の当たりにし、熱意では負けない自信はあったものの、学ぶ姿勢という点ではまだ足りないと実感し、これからはさらに気合いを入れて頑張ろうと決意を新たにしました。
この高校に入学できたことで、こうして着実に医師への階段を登ることができています。医学部志望の中学生は、ぜひ志望校選択肢の1つとして考えてみてください。
※本記事は『日経ビジネス 特別版 SUMMER.2025〈メディカルストーリー 教育特別号〉(日経BP社)』に掲載されたものです。
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