２０２５年４月に新校舎が竣工した。黒板はすべてホワイトボードとなり、新しい校舎で学ぶ生徒たちは、これまで以上の集中力を手に入れた。「余計な壁が減り、開放感が広がりました。廊下側の広い窓を通じて向かいの教室の様子が見え、廊下からも室内がよく見えます。まわりのクラスも一緒に勉強していると感じられ、ほどよい緊張感が生まれたようです」と話す神原校長。

 

　医学部志望を始めとする理系に強い学校として、実験室には最新機器を揃えた。化学室にも工夫を凝らす。「あえて天井をつけずに配管が見えるようにして、換気のシステムがわかるようにしています。実験室に来るだけでも勉強になる、と生徒には評判がいいですよ」

 

　また、校舎４階には「イングリッシュスタディセンター」が設置され、５人のネイティブ教員が常駐する。希望者は英会話だけでなく、英語でゲームやビデオ鑑賞などアクティビティにも参加できる。

 

「英語の配点が高い大学は多いので、医学部進学を希望する生徒の意識は高く、積極的です」

 

　何よりこれまで中学と高校で離れていた校舎が一つになったことは大きなメリットだ。職員室も一つとなり、中高それぞれの教員同士で情報共有がしやすくなった。職員室中央にはワークスペースができ、小さなミーティングもすぐに行え、これは生徒指導にも大きなプラスとなっている。生活面でも、すべてのトイレが温水洗浄便座となり、快適さが向上した。

　最強の学習環境が整ったことは、医学部合格に毎年、高い実績を誇ってきた同校にとって鬼に金棒だが、その実績を支えてきたのは創立以来の全寮制にある。

 

　「医学部には面接がありますが、大事なのはどういう考えをもっているかということと、それを相手にきちんと伝えられることです。中学は寮生活が必須です。二人部屋で、互いの考えに折り合いをつけながら生活をしなければなりません。今はどの学校も探究活動が盛んですが、寮生活は毎日がリアルな探究活動です。生活習慣の異なるルームメイトの話に耳を傾け、お互いが快適に過ごせる環境を探り、譲り合うことで対人関係能力が大きく伸びます」

 

　寮生活の意義は医学部に特化した話だけではない。社会に出た時に求められる協働のセンスも培うことが可能だ。

 

「社会に出た時に、１人の優れた人だけが力を発揮することはありません。同僚や上司、取引先など人間関係の中で協働する必要があります。寮生活は、どんな場所でも役立つ協働する力を身につけられます」

 

　寮生活によって、学習量も確保される。１日７時間の授業に夜間３時間の授業がある。自習ではなく、夜も教室で日中同様に専任の教員から指導を受けられるので、学習効率もよい。塾も英会話教室も必要ないため、保護者にはコスパ面でも評判だ。

 

「生徒には、先生を使い倒しなさいと伝えています。教員側もどんな質問にも対応できるよう常に学び続け、入試問題の解法を研究しています。生徒のやる気が教員のモチベーションにもなり、お互いに刺激を受けています」

　週末は遠方でない限り帰宅できるが、「週末課題」を出し、中学３年間で自主学習の習慣も確立させる。高校生になる頃には、自分で計画的に学習することができるようになっているという。また、中学では40分間の読書の時間が週２コマあり、本とじっくり向き合う時間もとられている。

 

　将来、医師になった時には、チーム医療を行う上でコミュニケーション能力は欠かせない。そのためにも寮生活は有効だ。実際のところ、「この子には寮生活が必要だ」と保護者が判断し、高偏差値の公立中高一貫校を辞退して入学した医師家庭の生徒もいるという。全国各地からの生徒、海外にルーツのある生徒もいるため、多様性も豊かだ。

 

　「“多様性を知る”ことは簡単ですが、寮生活を通じて“多様性を認める”ことが可能になります。それが生徒にとって何よりプラスでしょう」

 

　全寮制で心配なのは、子ども同士のトラブルだ。もちろんトラブルは皆無ではないが、一番多いのは中学１年の入学当初だけだという。

 

　「友達との距離感がまだわかっていないからで、親しき仲にも礼儀ありということを実生活で学びます。当然、そこには大人も入って双方が理解できるよう話をします。その繰り返しで、中３になるとまったくトラブルがなくなります。よい意味で人の表情を読み取ることが上手になるので、これは医師になった時にも患者さんに寄り添う力になります。医学部に進学し、実習先の医師にも秀明出身者は患者対応が違うとほめられます」

　医学部受験の小論文対策にもなるのが、同校の教育の柱となる「心の学習」だ。時事問題や校長の講話などを題材に文章で考えをまとめる。教員やクラスメートとともに考え、大きな社会問題に対して「なぜ起きたのか」と想像する訓練をすることで、医師にとって必要な患者に寄り添う姿勢も身につく。指定時間内で文章を書くことが習慣化する。

 

　「正しい文章よりも、おもしろい文章を書きなさいと言っています。おもしろいというのは、オリジナリティがあるということ。正しい答えをもっともらしく書くのであれば、生成AIにはかないませんから。おもしろい文章は、ホームルームで発表してもらいます」

 

　おもしろいかどうかは担任がジャッジする。担任の個性も見極め、生徒も担任をおもしろがらせる文章を工夫する。独りよがりでなく、採点者の視点を意識する力も身につけられる。この能力は、医学部進学者でなくとも、就活の際、自分の意見を相手にうまく伝えるという点でとても役に立ったと卒業生からの声も届く。

 

　卒業生による「医療講演会」が毎年行われるのも、多くの医療従事者を輩出している所以だ。卒業生の医師の講演は、身近なロールモデルとして「自分もがんばろう」と刺激を受けるという。「保護者が医師という生徒もいますが、やはりその身近さとは違うメリットがあります」

　特筆すべきは、小学生を対象とした「家庭学習通信」という通信添削だ。「添削をするのも専任教員で、とても丁寧な添削です。本校の教育を肌で感じていただけると思うので、ぜひご利用ください」

 

　来年度には、新食堂も竣工予定だ。これまで中学と高校で分かれていたが、厨房も食堂も一つになることで、学年を超えた交流もより深まるだろう。

 

　「本校は寮生活を通じて豊かな人間性を育み、よりよい自立をさせたいという独自性のある教育理念をもっています。それを理解した上で熱量のあるお子さんにぜひ入学してもらいたいと考えています」と神原校長はメッセージを送る。